xxx 2017-12-05 23:46:58 |
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(朝日が登り、日は既に正午を示そうとしている。細く開けた窓の隙間から冬の冷風が室内へ入り込み、整えた髪先を揺らす。冷えた頬に暖かみを与える様に陽光は陰る事なく周囲を照らして。此処へ来てまだ数日、否、もう数日といった所か。以前まで居た世界に比べて時はゆっくりと流れているように感じる。忙しない日常に身を置いていた、物事を深く思案する時間さえなかったように感じる。それが今では日がな一日、時間があれば物思いに耽る有様。行儀悪く立てた片膝に腕を乗せ、壁に背を凭れかけ中庭を睥睨する。暖かな陽だまりに包まれようと、未だ瞳に燃え盛る陰鬱さは消え失せることを知らない。ぎりっ、無意識に掌に立てた爪先から滴る血。見る間に修復される皮膚に重たい溜息を零し、喉奥に生じた焼けるような苦味を振り払う。そんな事を繰り返して数度、何やら屋敷中を引っ掻き回すような音が耳まで届く。そっと開けたドアから気配を消し廊下に出てはその根源を探るべく抜き足差し足で遠目に見えた小さな背後へ忍び寄り。特徴から察せるに以前屋敷のもの総出で片付けを行われていた、その諸悪の根源と見受ける。大きく発達した腕に、二つの頭が特徴的な彼等。辺りに谺す幼い声音が紡ぐ言葉を聞く限り、彼等の目当てに検討をつける。眉間に寄りかけたシワを揉み解し、やれやれと小さく呟いては騒動を納めるべく近寄り。ただ声を掛けるだけでは面白くない。先制攻撃でも仕掛けようか、意地悪く片方の口角吊り上げ、閃いた衝動のまま、先程まで北風で氷のように冷えた掌を使い、相手に気付かれなければ、外ハネの燥ぐ髪先を整える様に撫で、そのまま滑る様に首根っこ掴む様に手を伸ばしてみて。)
こォら、悪戯小僧ども。お探しの新入りは俺かい?賑やかなのはいいが、あんまし備品を壊さないでくれよ。その内、俺も掃除に駆り出されそうなんでな。
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