xxx 2017-12-05 23:46:58 |
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>307 夏目 央
…変に黙るんじゃないわよ、何か言ったらどう――っ、何よ!(調子が狂う、狂わされている。そんな自覚があるからこそ、何も言わない彼女を目の前にして何とも言えぬ気まずさの様なものに苛まれていた。頷くなり、首を傾げるなり、いつもの様に物分りの良い素振りを見せるなり、自分勝手な思考が無意識の内にそれらを期待していたのだ。然し、己の前ではいつだって物分りの良かった筈の彼女が待てど暮らせど期待した動きを、言葉を寄越そうとしない。そんなある種不慣れな沈黙に耐え兼ねて思わずむすりと顔を顰めながら声を掛けようとしたその時、優しい手付きとは一変しそう強くはないがかと言って決して優しくは無い力加減で尾を叩かれる衝撃に、発した一声は勢いこそあったものの彼女の目に晒した表情には確かな驚きの色が浮かんでいた。彼女は矢張りまた少しずつ変化している、これは間違い無い。そんな実感を強めたのは、未だ躊躇いの残る控えめな様子ではあったものの確かに胸の内にある小さな思いを伝えようとする声。ツケが回ってきたのは此方も同じ。常に自分本位であり続け、他人を思いやり他人に優しくする事から逃げ続けた結果、こんな時にどうしてやれば良いのかが分からないのだ。柄にも無く困惑の表情を浮かべ、唇をきゅっと結んだまま黙り込む事数秒。ふん、と短く鼻を鳴らす事でその沈黙を打ち破れば「センスの無い物寄越したら、容赦無くはたき落とすから覚悟なさい。」とぶっきらぼうに言い放った後、「それに…答えの分かりきった事を言うんじゃないわよ、不毛だわ。何処に行くって言うのよ、どうせアタシは此処から一歩も出られやしないんだから。」と己なりの答え、今の己が彼女に与え得る最大限の優しさを以てそう告げて)
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