xxx 2017-12-05 23:46:58 |
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>292 夏目 央
(少しずつ、少しずつではあるが彼女は"主張すること"に慣れてゆこうとしているのだ。幼少の頃より彼女を支えて来た処世術をこの館で、己と過ごす時間を通して変えてゆこうとしている――それが伝わって来る様な気がしていた。未だ根深く彼女の心を縛り付ける死と言う救済への願望が姿を消すにはまだ時間が掛かる。それでも、目に見えぬ一歩は踏み出された。柄にも無く、まるで我が子の成長を見守るかの様な心情が己の中に芽生え始めている事を直視出来ない自尊心は、それ以上の言葉を掛ける事を拒んだ。髪に触れられるのは特別好きでも嫌いでも無かったが、己を評価される事は好きだった。こんな時ばかり素直になれない。彼女の言葉に「少し、なんて中途半端は止めて頂戴。」などと突慳貪に言い放つ声が、そんな心情を表している。勘の良い彼女にこれ以上あれこれとつつかれてしまう前にと財宝の眩さの中へ歩みを進めると、後退りする彼女の腰へ尾を巻き付かせる事で強制的に部屋の中へ招いた。じろりと彼女を見詰めた眼差しは"四の五の言わずに入れ"と言わんばかりの鋭さ。扉が閉まる音を聞いてから尾を解き放してやれば、色取り取りの宝石が積み上げられた一角へと近付いて「場違いも何も無いのよ、アタシがアンタを此処へ招いてやったんだから感謝しな。」とそう言い放ち)
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