××× 2017-11-23 23:11:06 |
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>28 柊清斗
( 雑巾を絞るような、遠慮のない力で掴み上げた手首の痛みに男は小さく声を上げた。それに何も感じない。殺さないのはそうしないことにデメリットを感じているからであって、この男の命など、なんとも思っちゃいないのだ。しかし男は問いかけに対しこくりと確かに頷いて、ゆっくりと口を開いてみせる。それが母国語なのだとありありとわかるような、滑らかな発音だった。声色としては幾分弱弱しかったが、これが初めての対話である。意思疎通の確認だ。会話のすべてを自分が握っていて、この男が場を制することは不可能だった。明白に。
どうして自分はここに連れてこられたのか?という疑問をまるっきり無視して問いかける。「なぜ、私の名を知っている?」男の手首をするりと解放し、視線で縫い付けるようじっとりと瞳をのぞき込む。返事を待たず、数秒と経たないうちに「何を捧げた?お前に入れ知恵した者がいるはずだ。誰だ?何を受け取った?」口からするすると滑り落ちるようなスピードで詰め寄っていく。声を荒げる段階ではないが、不信感ばかりがこもった瞳で見下ろした。部屋の中には淀みが渦巻いている。この男の命など、なんとも思っちゃいないのだ。視界をきゅっと細めて、男の声を聞き取ろうと聴覚に集中する。全部見せろ、隠すな。そう瞳で訴えて、男の返答をじっと待った。 )
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