物草 惣兵衛 2017-11-14 04:24:08 ID:c196a580b |
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朝日が眩しい。
一度開いた瞼を少し下げ、細めた瞳を無意識のうちに手で庇う。それから、大きく欠伸をして、昨夜眠りにつくまでの流れと、今日やるべきことについて思いを巡らせる。
ここはイーストタウンの郊外、たまたま目についただけで、誰とも知らない者の畑の敷地内である。そこに建っていた物置小屋に背中を預けて一夜を明かし、今は丘の上から射した太陽の光に起こされた。
丘の上にあるそこそこ大きな屋敷は、逆光によって黒く染まっている。牧歌的な風景なのに、それを見つめる彼の心は重たかった。
「ビッグマミィ…」
呟いてから立ち上がり、服についた土を払う。あの屋敷は、かつて皆で過ごした場所。そして、今の彼にとっては追放されてしまった帰らざる地。あの屋敷のどこかに、今もビッグマミィはいるのだろうか。
「辿り着いて見せるよ。どこに行っても見つけだす」
独りごちたその時、パン、パンと乾いた発砲音が響き、物置小屋の壁が幾らか破片を散らした。咄嗟に身を屈めて、音がした方向から隠れるように小屋の裏に回る。
「誰だ!」
「ル、ルード…」
返ってきた声は震えており、姿を見なくても、腰の引けた雰囲気が伝わってくるようであった。そして、その声も雰囲気も、記憶にあるものだった。物置小屋の壁に背を沿わせたまま、思わず、ルードの口元には皮肉っぽい笑みが浮かぶ。
「マルタンか。久しぶりじゃないか!」
「やっぱり、ルード…裏切り者…!」
次に答えた声は、先ほどよりも剣があった。しかし、ルードも引くことはなく言い返す。
「裏切り者?どっちがだ!」
「…お、お前しか有り得ない!父さんを殺したな…?許さない…!」
返答はそこまでのようだった。駆け出してくる気配を感じ、既に装填を確かめたリボルバーを片手に、ルードも応戦体勢となる。
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