1919 2017-10-26 19:17:49 |
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( 唾を嚥下する音すら聞こえてくる様だった。先程まで騒がしく打ち鳴らしていた心臓の音が鳴りを潜め、抜ける様な黄色の瞳がまっつぐに此方を見詰めている。黒色の長い睫毛が僅かに琥珀色に掛かって、余計に際立って見える。その瞳から、目を離せない。名を知っている感情が湧き出て来ても、素知らぬ振りをしている。その事に気付いておき乍ら、友人という立ち位置にすら彼を置けていない自分自身に僅かな嫌悪を覚えた。静かな侭過ぎるかと思われた時間も、呆気なく空に打ち上がった花火の様な物に掻き消されてしまった。遠くから聞こえる、幾人かの騒ぎ声に呆れる様に頬が緩んだ。真剣な表情を浮かべていた彼の顔が一転、驚いた表情になって数秒後にやおら笑みを浮かべたかと思えば、其の儘彼の額が自分の肩へ。ふわりと香るその匂いを吸い込めば、くらりとする。力の抜けてしまいそうな体を叱咤して彼を支えれば、視界の端に映った光を受けた黒髪に徐に手を伸ばして、指先で梳く如く撫で。鬱蒼とした森の中に僅かに差し込む光が何と無く心地よく、えも言えぬ感情が湧き上がってくれば、頭を撫でていた掌を其の儘背中へと回し、力の限り抱きしめて )
…いいえ、前言を撤回させて頂戴。貴方ってば迚も素敵で勇敢な人なのね。見直したわ、ちょっぴりだけれど。ね、
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