ザック 2017-10-24 11:35:31 |
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( 窓の外でけたたましくサイレンが鳴り響いている。轟音と化したそれ達は外が阿鼻叫喚の図となっている事を示唆し、彼女の鼓膜にも痛い程に響いている。──然し、彼女の意識は今でも鮮明に脳裏に焼き付いている殺人鬼との思い出へと向き。思い出というには凄絶で悲惨で、些か血腥いものだとしても、彼女にとっては酷く胸を付く美しい記憶。暗い部屋で鈍い輝きを放つ澱んだ青の虹彩は一体何を映し出しているのか。 )
…ザック、
( 今となっては決して果たせない契りを交わした。馬鹿馬鹿しいと一蹴されそうな荒唐無稽な契りだったとしても、約束という名の鎖は解けること無く彼女を茨のように捕らえ。窓から差し込む満月の淡い採光は美しい金糸を照らし、闇に深く溶け込んでいた彼女の姿を露わにして。まるで、精算されていない罪を暴くように、光の差さない空間から彼女を救い出すように。小さく震える唇から、確かな力強い発音で男の名を呼ぶ。既に彼女の双眸は今居る空間ではなく、一人の男のみを映し出し、その面影に縋るように窓へと徐に視線を向ける。堰を切って溢れ出した思いは彼女の胸中で渦巻き、言いたい言葉は沢山あるというのにその唇は何も紡ぐこと無く結ばれた侭。傍らに在った冷たい温もり、己を守らんと強い光を宿した色の違う瞳、鼻腔を擽る包帯の香り、全てを鮮やかな走馬灯のように思い起こし。最早サイレンも叫び声も聴こえない、静寂に満ち満ちた青白い空間の中。軈て、月光に姿を晒した侭に、自らを優しく強く締め付ける鎖──一人の殺人鬼と交わした契りを宵闇に飲み込まれないよう確りと告げて。 )
…ザック、私を、殺して──
( / 脱字がありましたので訂正したものを投下させて頂きます…無駄な書き込み失礼致しました…! )
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