赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>三月兎
(置かれたティーカップの中身を覗き込む。室内にふわりと漂う甘い香りに騙されて毒なんて飲まされてはたまったもんじゃない。相手の口から語られるお伽話のような夢物語や、それをつらつらと話す相手自身をも疑っているのだから。濁りなく透き通るオレンジ色、カップに鼻を近づけ爽やかな林檎の香りの感じれば紅茶に詳しくなくとも毒が仕込まれていないことだけは確かで。自分の手には小さいカップを人差し指と親指で摘みあげるようにして口元に運べば身体を温めるにはちょうどいい熱さのそれを一口いただく。紅茶の酸味と林檎の香り、アルコール漬けの舌だってその美味しさくらいは分かる。満足のいく味ならば一言褒めればいいものを日頃言い慣れない言葉はそう簡単に出てこないのか、「悪くない。」とだけ相手に聞こえるか聞こえないくらいの声で呟いた。だが気分が安らいだのも僅かなひとときだけ。待てども待てども自分が求める答えが相手の口から出てこなければ幾分柔らかくなったはずの表情は逆戻り。不必要な時間を置かれて漸く返事をされるころには眉間のしわに加え、片足のブーツを床にカツカツと打ち付けていて。しかし、そんな悪態も簡潔に纏められた相手の説明が終わるとぱたりと止んでおり。鵜呑みにできるほどファンタジーを信じるタイプではないが、かと言って相手が嘘を並べているようにも見えなかった、どっしりと構えているつもりが話を聞く前よりも己の中で困惑が大きくなってしまったように感じる。「女王?アリス?……さっぱり分からん。どちらにせよ俺はすぐには帰れないのか。――蜂蜜の菓子を食うんだろう?」質問を重ねてもきっとこの不思議の国にいる限り答えは出ないのだろう、そう思えば諦めの溜息を吐いてから普段はそう欲しない甘味を相手へ片手の手のひらを差し出すことで“よこせ”と求め)
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