赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>三月兎
不思議の国。――本物、なのか。この世界も。その耳も。
(手に触れたそれはぽろりと容易く取れるはず、そう思っていたから力いっぱい引っ張り上げてしまった。血が通い温もりのある立派な耳はこちらの予想を裏切り取れることなく依然相手の耳として形を成している。本物の耳であったと驚くよりも、痛みを声に出さずただ両眼をかたく閉ざすだけに堪えた相手の我慢強さのほうが驚きだが、何よりも凛とした表情が一瞬でも崩れたことに一層加虐心が煽られるように思え不敵にヒクリと口角を上げて。話も出来るし表情もある、おまけに五感もある。何とも珍しい兎が居るのであれば、手折りし薔薇になど未練はなくぽい、と散々弄んだそれを通り道に投げ捨てて。触れた耳の感触を思い返すようにぐー、ぱー、と数回自分の手を握っては開く、そうしている間に目的の場所へ着いたらしい。自分の住む屋敷よりよっぽど広いそこを見れば言葉にせずともいつもは硬く結んでいる口が驚きで中途半端に開いてしまう。促されるまま中に入ると薔薇園とはまた違う菓子の甘ったるい匂いに眉を寄せながら自分が座っても壊れそうにない一番大きな椅子に腰をおろして。駆け引きは得意じゃない、まるで自分を試されているようで癪に思えば菓子類には手をつけず軍服帽を外し乱された髪を今度は丁寧に両手で直しながら「お前が知っていることを教えろ、一つ残らず。全てを、だ。」と、手っ取り早く情報を得ようとする声にこの世界について何も知らない、孤独にも似た困惑の色が微かに含まれていて)
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