赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
|
通報 |
>帽子屋
(彼の漏らした呟きに、思わずはっとした。そう言えば此処は今まで居た世界とは別の世界――その決定的な事実を"思い出した"自分に驚きと戸惑いを感じて、真っ直ぐに彼を見詰めていた視線がつい揺らぎそうになったが、それを堪える事が出来るのはあくまで冷静な彼の対応が助けとなっているから。帰れない、と言う途方も無い現実に晒されている事に変わりはないものの、彼の見せた笑みと手際の良い作業に上手く意識を移しながら「なるほど。国をあげてのパーティーともなると、華やかで盛大なのでしょうね。」と親切な彼の説明に相槌を打ち。この国の規模がどのくらいのものなのか未だ把握は出来ていないながらも、彼の話を聞くに嘸かし賑やかなのだろうと想像はついた。そして国をあげての一大行事のひとつであると言えるクリスマスパーティーを控えたこの時期、今まさにさっとドレスの裾にアレンジを加えている彼は休み前の繁忙期なのだなと納得して。一体何着くらい用意するのだろうか、彼はそれをひとりでこなしているのだろうか、などとあれこれ想像し始めたところでアレンジを終えた彼のウインクを受け取ると軽く裾を持ち上げてクリスマス向けに付け加えられた装飾に目を遣る。それから思い掛けず、本来これから用意しなければならなかった当日の衣装としてドレスも提供してくれるとう旨の発言を受け「色々と良くして頂いた上に、ドレスまで……本当に、ありがとうございます。折角そう言って下さったから、素直にお言葉に甘えさせて頂きます。」と前半は少し遠慮したような素振りも見せていたが、後半は唇にふっと笑みを乗せながら続けて。ドレスの試着とアレンジも終わった所で、言うか言わまいかと思案するように少しの間を置いてから再び口を開くと「もし、お邪魔にならなければ――忙しい時期でしょうし、暫く何かお手伝いをさせて頂けませんか。お恥ずかしい話ですが、生憎、裁縫はあまり得意ではないもので…製作のお手伝いは出来ないかもしれませんが、掃除や食事の用意ならお役に立てると思います。」と、せめてものお礼にとそう申し出て)
| トピック検索 |