赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>眠り鼠
( 晴天であった。雲が薄く、その向こうに青い空が見える。風もないのでしばらく雨に降られるということはなさそうだと思った。「……ジャバウォック?この辺りに住んでいるの?」ここは自分で見つけ出した場所だから人の手を借りたと思われることが嫌で、暗にそんな奴は知らないと告げる。歩いている間もこの男はいくつか質問なんかをしてきて、興が乗れば答えていたが、肩を上下したり鼻を鳴らすのを返事代わりにしていて、多分全体の半分もまともに取り合っちゃいなかった。けれども彼は特に気にしていないようだったし、それは本気で疑問に思っていないという証左だ。まるわかりの嘘を答えても多分満足したんだろうと思う。男が欲しかったのは、真実ではなく時間を埋める会話である。かといって、何もない時間を嫌っているわけではないんだろうなということは、この短い関わり合いでも理解しているつもりだ。尤も自分は、何もない時間を無駄そのものだと思っているが。ただ、凄いね、なんていうふうに言われることに悪い気はしなかった。単純に優越感がある。学校では腐るほど称賛を受けていたけれど、それは言葉の裏に隠された真意をも同じくらい受け取っているということだから。純粋な、取り入ろうなんて心がみじんもない称賛を味わうために、自分はこの男を遠ざけないでいると言っても良かった。
湿った草の青い匂いがする。洞窟に明かりなど当然なくて、奥に行けば行くほど暗くなっていった。男は自分こそ危ない足取りのくせしてこちらを気遣うものだから、なんと言っていいのかわからず微妙な顔をする。だけどこの空間に満ちる湿り気が男の声を吸い取って、そのまま石に染み込んだような気がしたから、何も言う必要はないと思った。その後も、一人で話し続ける男の声にじっと耳を傾けていたその時である。 )
ああ、彼にも挨拶してくれないか
( よう、数日ぶりだな。突如気さくな口調で掛けられた声にそう返事をする。すると奥の方から億劫そうにしゅるしゅると這い出て来たクサリヘビが一匹、灰色の身体をくねらせながら首を持ち上げてこちらを見た。体長は70cm程。しかしおかしそうにちろちろと舌を出しているばかりであったから、「ほら、頼むよ」と急かして隣に立つ男を顎で指した。 )
( / 何から何までご丁寧にありがとうございます……! )
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