赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>チェシャ猫
(首をひねる彼に、何かあったのかと声をかけようとして言葉は詰まる。何故かはわからないが、強いて言うならイカれた脳の中で警報がなっていたから。常に危険が付き纏うあそこで生きて来れたのは自身の可愛さもあれど、この勘もある。言葉がかからなかったのもあり、まいっかとそれを流してしまえば、"うんっ!"と元気よく返事を。路地裏の隅から見た大通りのように混み合っている場所は見たことさえあれど実際に踏み入れたことはなく、ぶつからないように手を離さないようにするのがやっと。想像とは違い、こんなにも歩くのに苦労するとは思わなかった。可愛いアタシに道を開けてほしいと傲慢な思いはボソリと消えるような"邪魔だなぁ"という呟きで顕になって。油断したことに気づけば慌てて、視界に入った菓子屋を「か、可愛いー!」と褒め称えることで隠そうと図る。バレてないよねと焦りでバクバクと主張する心臓を抑えつけ、鼓動に気づかれる前にとスルリと手を離せばはしゃぐ子供のように我先にと菓子屋を品物を眺めているか。「え、いいのっ!?アタシ、何もしてないのにー」ウッカリしていたが金銭の類はこれっぽちも持っていない。そもそも持っていたとしても、小さな島国のお金がここで使えるとは思えない。だとすれば、彼に強請るのが最善と考えたところで、恵みの雨のように優しい言葉が降ってきて。振り返り、無邪気な笑みを浮かべるが心情は穏やかではない。その言葉が、自分に対してではなく『アリス』に対してなので少々複雑。だって、彼はどのアリスに対しても同じ行動をとるのだろう。ようやく今になって、アリスという立場の厄介さに気づくことになる。そうして、その思いは彼から溢れた『女王陛下に差し入れ』という言葉に刺激され更に膨れ上がる。贈り物をされるのは一緒、だけど何かが決定的に違うのだ。グタグタと考えるうちに湧き上がる怒りと似て違う知らない感情から目を背けるように、明るい色とりどりの菓子を吟味し始め。目をつけたのは、様々な色の小さな飴が瓶に沢山入ったもの。「わぁ…」それは、煮詰まる感情を宥める美しさを持っていて、光に透けると影がステンドグラスのように色を持ってとても素敵。目を離すことが出来ず、ジッと見ていて。)
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