赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>失敗アリス
(あれだけ隠そうとしていたのだからどれほど気の毒な顔が拝めるのかと期待していたのだが、白い小顔にどこか哀愁宿る青い瞳、と中性的な顔が表れたのならもうこのクニには美形しかいないのだと半ば諦めたように肩竦め「――なんだ、きれいな顔じゃないか。しかも俺と揃いのものもある。」と、戸惑いの反応を楽しむかのように、青い瞳を示したあとに彼の頬にある十字の刺繍を、ツイ、と指先で撫でてみる。軍帽については目の前の大人しそうな相手が乱暴に扱うとは到底考えられないため、フ、と若干頬を緩めるだけで特に奪い返すわけでもなく貸したままにしておき。湖に遊びに行くなどと少女がするような行いを、歳を重ねた己がやると本気で思っているのかと思わず眉を寄せ「馬鹿なことを言うな。風呂がわりに水浴びしただけだ。」と半ば乾いた金髪、一房垂れた前髪をオールバックにするよう後方へ向かって撫でつけながら否定。淡白な口調も嫌ではないのか寄せていた眉をもとに戻し、「誰とも会う約束などしていない。俺はいつも一人だからな。」もとのクニでも、こちらのクニでも変わらない独り。誰かに合わせて過ごすほうが煩わしい。――のだが、今は気分もいいしなんとなく目の前の彼が気にかかる。そう思えば顔の刺繍に触れていた手を、ローブの裾をちょこんと握っている彼の手に下ろし細っこい手首を掴み上げ「暇つぶしに付き合え。」反応がどうであれ強制的に連れて行くつもり。だから返事を待たずその手を引っ張れば右も左もわからない森の中を、時間持て余していると感じさせるような緩慢な足取りで歩きはじめて)
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