赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
通報 |
>ドードー鳥
…やけに親切だな、(素直に『ありがとう』の一言が出て来ない、そんな性格をしていた。隣を歩く彼とはまだ出会って間もない上、そもそもオルゴールが話題に出た事自体はそれこそつい先程の話であると言うのにこうも前向きに取り合ってくれるのは何故か、何か裏があるのでは…などと要らぬ詮索をしてしまうのが捻くれ者のな悲しき性。笑みを浮かべる彼に対しにこりともしないまま怪訝そうな眼差しを送っていたが、差し出されたペンとメモ帳を受け取る頃には流石につまらぬ警戒心も薄れつつあった。結局、礼の言葉は出し惜しみにして歩きながら器用にメモ帳の上にペンを走らせれば『星に願いを』『ノクターン』の2曲を書き記す。此処にこれらの曲を知る者が居るかどうか定かではない中、そっとペンとメモ帳を彼の方へ差し出して「…礼くらいする」と、何とも素っ気無い物言いではあったものの、譲って欲しいとの彼の言葉には前向きな返事を。それにしても、先程から己とはまるで対照的な明るさを見せ付けられているような心地がして、猫背気味の背も一層きゅっと丸まってしまいそうな勢いである。普段であればそんな心地に疲れてさり気なくフェードアウトしても不思議では無い所をどうにか踏み止まらせる程、オルゴールとは己にとって大きな存在だった。それに興味をもたれるのは、正直少し嬉しい。結局はそんな気分が態度に少しずつ少しずつにじみ出てしまうのを隠せぬまま、ちらりと彼に向けた視線を直ぐに前方へ戻すと「別に良いけど…作業中俺は人と口を利かねぇよ」と釘を差すように呟いて)
トピック検索 |