赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>眠り鼠、帽子屋
(ワンピースの皺を伸ばすようにピンと伸ばし、髪は乱れていないかと手ぐしで整える。本当は化粧も直したいところだけれど、持っていたはずのショルダーバッグは無くなってしまっていて鏡も無い。すう、はあ、と深呼吸を一つして、眠り鼠が開けてくれているドアへと歩んだ。「別に、他のアリスが居ても気にならないわよ」此処に居るあいだは、 大多数のアリス ではないのだと思うと胸がじんわりと温まる心地がしたが、それを顔に出すことはせず。どんな場所であれ誰かに遠慮するなど自分らしくないと、ツンと冷たい口調で 気にならない と述べてから、んべ、と舌を見せ部屋の中へ入り。すると部屋の奥から人の声が聞こえ、それがかのデザイナーだろうか、と思い当たれば慌ててピンと背筋を正した。眠り鼠が会話しているその相手は、スラリとした長身、輝くような金色の髪、個性的なメイクときらびやかな装飾品の数々を身に着けている。まるで憧れの芸能人にでも会ったかのようにぽかんと口を大きく開きながら二人の様子を眺め、その相手がこちらを向くと慌てて口を閉ざした。「あ、あり、ありがとうございます!」大切な化粧品を持っていくのを快く受け入れてくれたこと、更に愛想の良いウィンクを向けられてしまえばまるで矢で撃ち抜かれたかのように胸を押さえ、深く頭を下げてからその後姿が見えなくなるまで呆けたように眺め続け。ようやくその姿が見えなくなると慌てて眠り鼠の後を追い、「ちょっと、アンタ……あんなに美人な人と一緒に住んでるなんて……!」と羨望と嫉妬のこもった声を上げながらぽかぽかとその背を叩いた。部屋に入ると眩しそうに目を細め、一瞬の間を置いて化粧品の並ぶ棚へ駆け寄り。「何コレ!? こんなの見たこと無い! この色の組み合わせ……パッケージも可愛いし、やだ……ここは天国なの?」夢中になって一つ一つ手に取り見ていると、後ろから聞こえた呟きにぴたりと手を止めて振り返る。「な、なに言ってるのよ。アンタってさっきからわけ分かんないことばっか言うんだから!」女の子らしい色などこれまで使ったことがない。そんなカラーの自分を想像したら恥ずかしさが込み上げ、文句をひとつ述べただけでまた棚の方を向き直し。一通り気になる物をチェックすると、迷惑にならないよう、必要になりそうな物を最低限貰って腰を上げ。「本当……こんなに素敵な化粧品、貰っていいなんて悪いくらい」と、手に取った化粧品たちを眺めてぽつり呟き)
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