赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>眠り鼠
(靴を片手で持っているとやはり指が疲れてくるようで、再び両手に一つずつに持ち直すと、それがどんな人物なのだろうと想像を巡らせてウキウキとした様子で揺らし始め。「帽子屋? 眠り鼠もヘンな名前だと思ったけど、帽子屋ってのも妙ちくりんな名前ねぇ。個性があって良いけど」勝手に想像していたスラリとした長身の美男子は、名前を聞いたとたんありとあらゆる帽子のイメージに埋もれてしまった。「化粧は好きって言うか……アンタ、裸で外は歩かないでしょ。それと同じ。化粧は服を着るのとおんなじなの」ようやく庭の植物と離れたかと思いきや、今度は森へ入っていくのか。お洒落とは縁遠いような周りの景色をキョロキョロと興味深そうに見渡しながら、靴を指示棒のように立てて相手の言葉に答える。「別に出来ないことなんていちいち言う必要ないわよ。バカ正直ね、アンタ。美味しい紅茶が淹れられるなら、それで良いじゃないの」控えめな相手が言うのだから、きっとそれは本当に得意なことなのだろう。それでも、謙遜するように出来ないことを引き合いに出すのはあまり好きではない。やはりもう一度靴を片手に納めると、むにむにと相手の頬を数回摘まみ。「仕立て屋に、芸術家? アンタ顔が広いのね。意地悪言われるくらいなんてことないわ。ただ、もし喧嘩になったらアンタが止めなさいよ」どこか不安げに告げられた忠告は、自分にとってはさした問題ではなく。心配するのならば、自分がその人物に皮肉られたときにカッとなって言い返した場合のことだろう。過去にそういったことで何度か問題を起こしたのを思い返せば、頬を摘まんでいた手を止め、今度は指先でツンツンと頬を突き)
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