赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>眠り鼠
みんなアリスって、それじゃあ呼ばれた時に自分が呼ばれたんだか分かんないじゃないの!(聞けば聞くほど謎は深まるばかりで、それも、みんなと同じ括りにされているような扱いはとても不服だった。持っていた靴を片手にまとめると、空いた手でぽかぽかと相手の背を叩き不満を述べ。訳が分からないながらも、さっき一人でポツンとあの庭園に立っていたときより幾分かゆったりとした気持ちで居られるのは、対等に会話できる相手が現れたお陰か、こうして触れている背が温かいからだろうか。「眠り鼠ね。女王様の候補ってのもよく分からないけど、そうじゃなくても大事にしなさいよ! 女の子には優しくしろって習わなかったの?」だいじにしなきゃ、という柔らかな言葉の覚悟は、怪我を心配してくれた様子や、こうして自身を背負って城へ連れて行こうとしてくれていること、説明が得意ではなさそうなのに懸命に伝えようとしてくれていることからも十分に感じられた。それでも不満だったのは、やはりそれが自分一人に向けられたものではなく、恐らく アリスたちみんな に向けられているだろうということだった。背中を叩いていた手を相手の頬へ移動させ、さっきよりも柔らかい力でふにふにと揉むように摘まんでいると、続けられた言葉にピタリと手を止めた。「帰れないって!? 別に恋人が居たわけでも、仲のいい友達が居たわけでもないから、ココで暮らすんならそれで構わないけど……荷物を持ってくることもできないの? 化粧品やら、服やら、アクセサリーやら……この間買った新色のマニキュアだって持ってきてないのに!」頭に思い浮かぶ未練はアチラに居る人々ではなく、ドレッサーに並べた化粧品や、クローゼットに詰め込んだ洋服たちに向けられていた。「やだあ! 一度帰る! 絶対に戻ってきてあげるから!」バタバタ、と子供のように両足を前後に動かしながら、相手の動きを止めようとするように、体へ回した腕に力を込めて)
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