赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>眠り鼠
(どうしてこんなところに一人ぼっちで、それも怪我までしないといけないんだろう。人差し指の出血が止まったのを見つめながら、涙が零れ落ちて化粧を落としてしまわないようにそっと指先で拭い取る。それでも、出口の見えないこの庭園から帰る術も分からず、不安は胸の中で広がるばかり。拭っても尚浮かぶ涙にイラつきさえ覚えて俯いていたところで、何かがガサゴソと動く音がして顔を上げた。確かに塞がっていたはずの場所に空間が現れ、そこから柔らかそうな顔に、穏やかそうな空気を纏った男性が一人こちらへ向かってきた。こんにちは、と言いかけた口調はのんびりしていたが、途中で驚いたように動きを止め、それから心配そうにこちらへやって来る。何から驚けば良いのか、どこを突っ込めばいいのか、自分の想像の範疇を超えることが起こりすぎたせいで、目に浮かんだ涙は零れることなくそこでピタリと止まってしまった。「怪我……は、したわよ! この薔薇、夢かと思ったら本当に痛いし、血も出るし、出口もないし。お腹はアンタのせいで空いてきちゃったじゃないの! ここは一体どこなのよ!」泣かないで、と繰り返されるものの、寧ろ今泣き出しそうなのは相手の方だろう。頭を撫でる手は柔らかで大きく、初対面だというのに触れられて嫌な感じはしなかった。だから払いのけることこそしないものの、相手ののんびりとした口調と比例するように早口で捲し立てるように言い切ると、トドメを刺すように相手の柔らかな頬をむにり、と摘まんで伸ばし)
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