アリスは憂鬱な夢を視る（　半無登録　/　NBL　/　提供おじさん　）

＞三月兎

（ケーキを口にしながら、和やかな時間が流れる。紅茶で喉を潤せば、穏やかな白桃の香りがふわりと漂った。三月兎は、チョコレートをやはりおいしそうに食べている。今度絵を見せて欲しいと言われるものの、専門家の彼に比べ、こちらはお散歩がてらスケッチブックを開くぐらいだ。それでもきっと、年相応のぐちゃぐちゃとしたらくがきを見せたところで、この男は気にしないのだろう。「ええ、そうね。描く物は家に置いてきちゃったから、今度貸してくれたら嬉しいわ」そう返しながら、残りのケーキに舌鼓を打つ。絵だけでなく物を作ると兎は言うが、はたしてどんな物を作るのだろう。そんなことを考えていると、彼がフォークに乗せたチョコレートケーキを差し出して来た。どうやら分けてくれるらしい。人の手から直接食べ物をもらうのは慣れていないが、正直チョコレートケーキも食べたかったのは事実である。結局誘惑に負けて口を開けば、甘いケーキが口の中に入って来た。ほろ苦いながら、濃厚な味わいがじわりと広がっていく。じっくり味わって食べると、お返しに自分のケーキもあげることにした。先ほど兎が、ちらりとこちらのケーキを見ていたためだ。さすがに口に持っていくのは憚られて、彼の皿へと切り分ける。最後に誰かと食べ物を分け合ったのはいつだろう。遠い昔に忘れてしまったような、まろやかで、優しい時間が流れていた。）


（きりがいいので今日はここまでとさせて頂きます。手探りで書いているうちになんだか面倒くさい子ができてしまいましたが、世界観を掴めたらもう少し活発に動かしてあげたいと思います。楽しかったので、またお邪魔させて頂けたら嬉しいです。お付き合いありがとうございました……！）