赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>三月兎
(三月兎が座るのを見ると、自分も同じように、傍にあった椅子に腰を下ろした。目の前にはフルーツとチョコレートケーキが置かれている。家ではあまり、こういった高級そうなお菓子は食べさせてもらえない。どちらもおいしそうで悩んだが、「フルーツにするわ」と答えた。差し出されたそれを、傍に置かれたフォークで切って口に運ぶ。甘くてどこか透明感のある味わいに、胸がほどけていく。あまり自覚していなかったが、どうやら自分は随分と緊張していたようだ。紅茶にも口をつけつつすっかり甘い物に夢中になっていると、三月兎が絵について説明してくれた。どうやら涙の湖、という場所を描いたものらしい。本当にこの景色の場所があるなら、彼の言う通り、いつか訪れてみたいものだ。オレンジ色の果物を切りつつ、口を開いた。「わたしも外でお絵かきをすることはあるわ。……あなたみたいに上手じゃないけど。――いつもこうやって、スケッチをしているの?」)
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