赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>蜥蜴のビル
(食い気味に答えたその勢いが失われた今、はしたない、というお上品な感性を常日頃持ち合わせ生きている訳ではないものの、流石に意地汚かったかなと顔を強ばらせ。気まずさに視線を他へとやっていれば、聞こえてきたのはしのばせた笑い声。笑ったりするんだなんて意外性を抱いてはぱしぱしと目を瞬こう。次いで頭を撫で回されるという初体験に一瞬ぽかんと口を開け。堪能する間もなくあっさりと離れていった大きな手が残していったのは、温かみと土汚れ。街中で食入るように見たワンシーンがまさか自分に回ってくるなんて思っておらず、じわりと胸中が満たされる感覚に、半分ほど相手の話を聞き逃し、それでも『太れ太れ』という言葉尻だけは捉えていて。弱いおつむがそれを額面通りに受け取って、一連の流れで得た嬉しさをそのまま放出するかのように「分かった、沢山食べる」、そう相好崩しながら答えよう。再び始まった案内に、今度は先程と違いその隣を歩きながら話を聞いては女の子は服を買うことが好き、というまるで常識のように語られた言葉に軽く衝撃を覚え隣を見上げて。服は常に支給されるものであり、買うという概念と結びついた試しがなかったからである。ショッピングが気にならないかと言われれば気になるものの、正直隠すべき場所が隠せたら何だっていいというのも本音であり。「そうなんだー」と、何とも生半可で心のこもっていない返しをしながら到着した厨房で、どうやら料理を作ってくれる人がいないことは理解して。期待していた分落ち込みは軽くなく、思わずお腹に手をやって。だがエプロンを掛けだした相手の放った言葉にその落ち込みも漏れなく安堵と歓喜に変わり、喜び勇んでテーブルへ着いて。食べられたら何でもいい、という言葉は作ってくれる彼にも普段その腕を奮っているだろうコックにも悪い事くらい察せられるため口にはしない。だが運ばれてきた料理におや?と眉を上げ、もっと酷いのかと思ったと危うく口走りそうになる言葉を飲み込んで「美味しそうよ?」そう口にしてみる。頂きます、手を合わせフォークを手に取るとまずはパンケーキを一口。数回の咀嚼の後顔を上げ、未だ自分の皿には手を着けていない彼に「面白い味だわ」と満面の笑みで言い放って、また自分と目の前のご飯との世界へ戻っていこう。)
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