赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>赤の女王
っ、
( 話が終わったのか、ゆうるりと開かれてゆく扉を前に小さく息を飲み構えるも、聞えてきたのは、優しさを滲ませた凛と透き通る声と、笑みを浮かべた嫋やかな表情。イメージとだいぶ異なるそれに一瞬、驚くも直ぐに立ち振る舞いを整え、深々と頭を下げる。こちらが言葉を発する前より先に促された椅子に静々腰を掛ければ、その後の慈愛の籠った一言にまるで魔法にかけられたかのようにすっと、体から余分な力が抜けて。緊張からかほう、と息を吐けば、一言で緊張を解かす彼女のカリスマ性に思わず見惚れてしまいそうになった。「_寛大なお言葉痛み入ります。本日はお忙しい中、私めのため、貴重なお時間を頂きありがとうございます。」もう一度深々と頭を下げ、礼をする。王族に対する挨拶など分からずごちゃまぜではあるが必死に言葉を選んでから顔を上げ、少しばかり不安がちらつく様子のまま言葉を繋げて。「…すでにご存じでしょうが、私は先日この世界へと迷い込んできたアリスです。その節は侯爵夫人殿及び、城の使者様に大変お世話になりました。今一度感謝を述べることをお許しください。」ゆるり、と瞬きを繰り返しては、未だとぐろを巻き続ける不安に強張った顔はちゃんと笑えているだろうか。彼女の目から逸らすのは不敬だと、まっすぐに見つめながらも堅い声色で。「____さて、本題なのですが、本日は女王陛下へのご挨拶ともう一つ、この世界についてお聞きしたく参った次第でございます。私は、迷い子が皆何故アリスと呼ばれるのか、どうしてここにいるのか。そして、この薄れゆく、自分のではないと感じた記憶は一体何なのか。何一つとして知りません。」目の前の女王についても昔はアリスだったといった。女王候補とは本当なのかと納得してから、次で最後だと震える声を叱咤して。「太それた願いだということは重々承知しております。ですが、少しばかりの知恵を私目に授けてはくれないでしょうか。」お願いいたします。と頭を下げた。さすがに食い物にされるのだけは勘弁なのだ。この世界はどこか歪んでいて危険だ、何も知らないというのは生理的にも恐ろしいものがあった。もし、断られたらどうしようと。ネガティブ思考が脳裏にちらつくも持ち前の気丈さで振り払って。頭を下げたまま相手の言葉を待ち。 )
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