赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>侯爵夫人
問題は無いさ。元々私は、部屋には殆ど物を置かないのでね。
(清掃も整理整頓も行き届いた生活感の薄いその一室は不思議と己によく馴染む、そんな風に感じた。と言うのも、この殺風景な室内の様子は元のクニで己が暮らしていた部屋によく似ているのである。必要な物さえ揃っていれば、余計な物を置いて散らかるよりずっと良い__彼の暮らす家が一体どんな様子であるかを今はまだ知る由もないが、どうやら部屋の好みと言う点では正反対だったらしい。散歩がてらに立ち寄る分には良い場所かも知れないが、少なくともこの部屋に物を増やす目的で赴く事はほぼ無いだろうなと内心にそんな予想を立てつつ相槌を打つ。然し、物欲こそ無いものの次いだ彼の言葉が酒に触れるものであった事には多少なりと興味を抱いた。若い頃から酒は好きだ。歳をとってゆくに連れ飲み方の傾向は徐々に大人しく変化していったが、所謂"ザル"と呼ばれる程度には飲める口だと自負している。テーブルに頬杖をついて脚を組み、彼もまた同じ酒好きであると言う事実がありありと分かるその笑みにくっく、と喉奥を鳴らせば「それは良い事を聞いた。」と返答を。危うく"どうせなら今からでも"とそんな気持ちを抱き掛けていた所で聞こえたノックの音にはた、と視線を流し、酒に代わる優雅なティータイムの為のあれこれが届けられた事を知ると「酒も良いが、これも悪くない。丁度、疲れた体に糖分が欲しいと思っていた所だったのだよ。」とメイドに微笑み掛けた。差し出されたカップには"有難う"と一声、そのまま品の良い紅茶の香りを楽しみつつカップに口をつけて)
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