赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>侯爵夫人
確かな腕に商売上手と来たか__これは面白い。
(占い師とは兎にも角にも対人商売、巧みな話術が幾つかある適性の内のひとつである事は言うまでもない。此処までの短いやり取りの間でさえ、彼はその適性を十分にもっているのだと窺えた。次いで、身を以って知る事となった確かな実力。出会って間もない、それこそ限り無く他人に近い立場の人間から言い当てられたとあっては、例え彼にとってはそれが即席の簡易的な力の披露に過ぎずとも信用せずにはいられない。此処までの段階をきちんと踏んだ上で最終的に己をちゃっかりと今後の顧客候補に加えてしまうのだから、その抜け目の無さにはつくづく感心させられた。惚ける彼を更につつこうとするのは野暮と言うもの。部屋へ案内してくれると言う彼に引き続く大人しく着いて歩けば、道中すれ違う使用人達に軽い会釈を。勿論、ひとりひとりの顔をざっと記憶しておく事を忘れない。抜け目が無いのは一体どちらの話か、此方も負けず劣らずと言った様子で辿り着いた一室に足を踏み入れると一通り室内を見回した。シンプルであるに越した事は無い、己にとってはその方が落ち着くのだ。今後の暮らしの見通しは全く立ちそうもなかったが、少なくともこのプライベートな空間は重宝される事となるだろう。静かに歩み寄った先は室内のテーブルと椅子の傍、するりと椅子の背凭れへとその丸みを確かめるように指先を這わせてから腰を下ろすとやや疲労感の滲む息を吐き)
想像よりずっと過ごし易そうな部屋で安心したよ…それに、良い案内人にも恵まれたようだ__有難う。
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