赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>帽子屋
……食ったからにゃ元の国には返してやれん、そう言うんじゃろ。阿呆でもそんくらいは知っとる。
(指先から流れる血の味混じりでも甘味に飢えた舌に蜜の味は甘く染み渡り、花弁をボロボロと零しながら口奥に詰め込んでいるといつの間に現れたのやら生垣越しに見えたのは奇怪な異人の女、否、男。ぎらつく色彩が眩んだ目に突き刺さりじくじくと頭痛を引き起こすが、骨ばった指が掴む物から漂う濃い砂糖の匂いに気が行くともうそればかりが気掛かりで、目だけは訝しむように細めつつ一口分欠けたそれをひったくると噛み付くように搔っ食らい。噛めばふわりと消えてしまう呆気なさを惜しんで指まで齧りつつ呟くのは遠い昔に聞いた祖国の言い伝え。あの世の物を食らって現世に帰れなくなると言うのなら、この狂ったまやかしからもまた逃れられなくなったのやも知れぬと「……ええわ、どの道帰るほどの御国もありゃあせん。気違いなんざおまんま食うてオカマと心中するんが似合いじゃ」悲観よりだらりと倒れ伏した姿勢そのままに投げやりにひとりごち、仕入れた焼き菓子一つ分の労力でどうにか身を起こして「アリスっちゅうのが俺の名前か。返事すりゃ飯が貰えるんか。……そんなら幾らでも尻尾振ってやるで」ズル、と重い体を引きずりなが今一度目の前の男のサアカスめいた装いを上目にじろりと眺め見て、おそらくは己が生み出したのであろう彼を含めた幻覚を諦観の内に受け入れて)
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