赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>侯爵夫人
背筋をしゃんとし、歩き始めた男の後を付いてゆく。辺り中見る限りの薔薇にこれはちゃんと出口に向かっているのだろうかと疑問を抱くも、今はこの男しか頼れる人はいないのだと思い、黙ってついてゆく。その間に男が飄々とした口ぶりで、薔薇に閉じ込められてしまうぞと言えば、再びぞわりとした怖気が駆け巡った。直感的に告げてくるそれは薔薇にさえ矛先を向けるようで、軽口だと分かっているのに蔦が蠢くたびにはぐれてしまうのではないかと恐怖に襲われた。ちらりと先行する男を見、気づかれぬように男の袖口を少しだけつまむ。それだけで安心した。すると、こちらをちらりと見やった男にばれたかと肩を跳ねさせるが、どこへ行くのだとと問われれば、はっとする。つい森と言ってしまったが、こんな得体のしれない世界ならば先ずは人がいそうな城に向かうべきだったと思い直す。むむ、と唸っていれば、帽子屋だ湖だなんだと言われ、おくびには出さないが、どこに行けば良いのかと内心悩む。彼は比較的良い人だったが、ほかの者も同じとは限らぬ。社会はいつだって厳しいのだ。ふと、遊園地にイベント。そんなメルヘンな単語が聞え、思考の底から這い出ては、「遊園地でイベントをやっているのかのか?」と少しばかり弾んだ声で尋ねて。可愛いものに余念がない私はそこにしようとしたが、この男は暗いところでは目が使い物にならないといった。なら、私をそこまで送って行ってはいくら帰路にあるといっても万が一でもあったら大変なのではないかと、男が遊園地の中でも付き添ってくれると勘違いしているからか、無表情な顔に幾分かの心配が滲んで。 )
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