赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>侯爵夫人
っ、何の用だ。
( 虚ろに浸っていたものの数分。少し回想に馳せる程度と考えていたが、如何やら深く沈みすぎていたらしい。接近してくる人の気配に気づけぬまま、いきなりの人声にびくり、と肩を震わせては驚きから早鐘を打つ心臓に小さく深呼吸をして、落ち着けと宥める。緊張からか少しばかりどもった声とともに相手を睨み付けた。視線の先の人物はこの幻想世界に似た奇抜な格好をしていて、女性特有の膨らみがないことと、厚い胸板から性別は男だと思われる。そしてどうやらこの男、私が薔薇と会話していた、この薔薇は噂好きだと宣うようだ。薔薇に弱みを握られてたまるものか、それに何より私は薔薇となど会話できまいて。むくむくと募ってゆく不信感に眉をひそめ、からからとからかうように笑う相手にからかわれているのだと気付いてますます眉が皺を濃くした。こちらは警戒と不遜な態度で見ていたが、男は誘導、つまりは森か城のどちらかに連れていってくれるよう。てっきりまたからかわれるのだろうと第二射撃に対する構えは的外れで、突然な親切に目を瞬かせるが、せっかくだと安易に森を示す扇子に引き寄せられるように、森。と一言呟く。続いて述べられた 侯爵夫人 という名に、ニックネームかなにかだろうと納得し、侯爵夫人と発音を確かめるように呟いてからこちらも名を、と言いかけたところで止められ、迷い子は皆アリス、即ち己はアリスという名前だと言われる。はあ?と怪訝な顔で自分の名前は違うと言おうとして、はた、自分の名前が一瞬出てこなかった。途端、ぞわりと走る怖気に無意識に腕をさすれば、先程と同じ驚きとじわじわ浸食してくる不安の入り混じった瞳を向けてから、すぐさま視線を外し、「それでは、案内を頼もうか侯爵夫人殿。」と、先程とは打って変わり気丈な態度で言い放って。 )
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