赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
|
通報 |
>ムカデさん
( 少し強引に押しすぎただろうか。折れた感じの否めない返答だったが、それでもようやく彼の首が縦に振れると珍しいものを見た時のような高揚が胸を打ち、ふふふ、と満足げな声が漏れて。「 、ほんと?ありがとー 」掛けられた褒め言葉も他人事に聞こえる性なれば、頭の中では優しいとの言葉を否定しながらも口は礼を紡ぎ。全てを見透かしそうな瞳と視線が交われば、直ぐにっこりと笑んでそれから逃げるように前を向き。「 ふぅん … ふつーだね 」医者に初めてかかった時から気になっていた疑問は彼により呆気なく解消されて。普遍的な回答に子供心が打ち砕かれると、宛所の無い不満が声に滲み出し。――― ふと、隣の気配がないことに気が付く。そちらを見れば彼の姿が無く、辺りを見渡すと少し後ろに歩みを止めている彼が見えた。首を傾け声を出そうとすれば、貫くような瞳と目が合い言葉が奥に引っ込み。息さえも止められそうな真摯なそれに何かしてしまったのかと不安が心を蝕み始めかけて、しかしそれは何事もなく再開された歩みにより払拭される。一体何だったのか、不思議な心地に首を傾げつつ自分の歩みも再開させて。「 … お城以外の場所に、? 」 小さい頃から此処に住みなさいと決められた場所があって、そこ以外の場所で住む選択肢など与えられなかった身としては、その提案は核心をつくように鋭く。あまりの動揺に視線を彼方此方へ投げ掛けていれば、続いた彼の言葉にぎゅっと目が絞られ。生きたいように生きる、その言葉がじんわりと胸の内に広がると同時に体がふっと軽くなり、「 それなら … あの大きな遊園地に住みたいなぁ。それでね、貴方と一緒にコーヒーカップに乗って、その沢山の手でハンドルを力いっぱい回してもらうの! 」 両手を重ね、幸せな気持ちのままふふっと笑ってそんな夢を謳ってみては、「 気が向いたら、私の夢を叶えてくれる? 」 なんて隣に立つ彼へ、今度は健全で純粋なお誘いを。 )
| トピック検索 |