赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>悪魔
(なまじ愛想が良いだけに徹底して撥ね付ける事が出来ない__それは、このクニへ来て初めて出会った猫の彼と同じだった。どうして此処へ来て出会うのはこうも厄介な相手ばかりなのかと、そんな思いに頭を悩ませずにはいられない。そもそも、元の暮らしを振り返ってみると、ツンケンしてさえいれば大抵の人間は己から離れてくれた…筈なのだが、此処へ来てからどうもそれが上手くいかないのだ。もどかしさにも似たその感情に纏わり付かれる居心地の悪さは、彼の眼前に晒したままの顰めっ面に表れているのではないだろうか。こんな事を考えている間も、此方の意図とは正反対に彼の関心を引いてしまっているなどとは思いもしない。珍しいと言う評価には特別前向きな感情が生まれる事もなく、寧ろ東洋の人間であると言う事がこのクニの住人の目を引く理由のひとつとならない事を切に祈りながら「…俺を此処から連れ出すって言うお前の言う事をひとつ聞いてやるんだ…お前も何かひとつくらい、俺の言う事聞けよ」とぼやく。此処まで来ればもう彼を振り切って部屋まで戻るだけのエネルギーなどある筈もなかった。一体何処へ連れてゆかれるのか、そんな憂鬱さと一抹の不安とにそれでなくとも猫背気味の背を丸めながら気怠そうな足取りで歩き出す。ポケットの中へ突っ込んだ手で乱雑に煙草とライターを取り出せば、既に残り一本となっていた事に今更ながら気が付いて舌打ちをひとつ。薄い唇に最後の一本を引っ掛け、安物のライターで火を点すと「…悪魔に連れて行かれる様な場所に、大人しく泊まると思うか」と眉を寄せて。)
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