赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>悪魔
…他当たれ、(一体この男は何を言っているのか__諸々を通り越して最早呆れに近いものを抱きながら吐き出したのは、肺に吸い込んだ空気を目一杯に外へ締め出す様な重い溜息だった。落とす所まで落とす、彼のそんな野望はちょっとやそっと噛み付いた所で失せはしないだろうと予想すれば、既に頭が省エネのスタンスに入ろうとする。刺し殺しそうな鋭さで彼を睨み付けていた視線はふっと他へ逸れ、フンと皮肉たっぷりに鼻で笑ったかと思うと「悪魔か…そりゃあ、これ以上になくアンタに相応しい呼び名だろうよ」などと吐き捨てて。嗚呼、何故扉を開けてしまったのか。つい数十秒前の己の行動が悔やまれる中でも未だ引き篭りと言う安定を諦めていない頭は、部屋の中へさっと後退する隙を窺おうとしてはみたがどうやらそうもいかないらしい。あれよあれよと言う間に突き付けられた二択、この様に強引な展開につくづく己は免疫がないのだと思い知らされた様な気がして、口惜しさから眉間にぐ、と皺が寄る。明確な答えを返す事は無かったが、それ以上の抵抗を見せようとせず沈黙したのは己の答えが"前者である"と言うこの男なりの返答であった__が、此処に来て彼から視線を逸らしていた事が裏目に出る。閉鎖的な性格を象徴する様に鬱陶しく顔に掛かる髪をかきあげられると思わず"っ、"と息を詰まらせ硬直した。油断も隙もない、本能がそう悟る。再び表情に舞い戻ってきた険しさをそのままに、左右異なる色を宿したふたつの瞳をじっと睨み付けて「埜瀬…埜瀬 密、聞いたからには覚えろよ」とぶっきらぼうに名乗った後、またも左手でぱっと髪をかきあげるその手を払うと「…それから気安く触んな、」と続けて。)
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