赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>人魚さん
( 普段見ることのできない水中と云う異世界の風景は想像していた以上に繊細且つ透明であり。言葉を幾つ尽くしても表しきれないそれに此処に来た目的も我をも忘れて楽しんでいれば、ふと耳に届いた声は水の中でありながら鮮明で違和感の一つも無く。おかげでハッキリと聞こえた綺麗だという単語に、彼も此処へ帰る度に綺麗だと思い直すのかと可笑しさと共に親近感を覚え。やっぱり貴方もそう思うんだ、そう相槌を打とうと開いたままの口を動かそうとした時、しっかりと質量を持った気配が耳の直ぐ傍に表れると振り向く間もなく放たれた言葉に身体が跳ね。綺麗と称する言葉の向く先が違うことに気が付いては、水面に投じられた石の如く胸中に広がった大きな波紋は息を詰まらせて。「 、 ううん、余りにも綺麗すぎてつい持って帰っちゃいそーだけど … 頑張って我慢するねぇ 」何事も無かったかのように説明を施していく彼に喉まで出かけていた追及の言が奥に引っ込むと、其れ以上は此方も何を話すこともなく。肩を抱く手とくるくる回る視界に初めて会った住人が思い出されては思わずくすくす。冗談半分本気半分の言葉を告げ返しながらそっと彼の元を離れ。 「 さっきね、貴方に綺麗だって言われて何だかとーっても嬉しかったの。まるで生まれて初めて綺麗っていわれたみたいに! でね、気になったんだけど … 貴方って、さっきみたいなことを誰にでも言うの? 」 慣れない水中での歩行をゆっくりと成しながら目に付いたサンゴを拾い上げつつ、流そうにも流れない疑問をそれとなく吐き出し。それは陳腐な嫉妬や恋心などでは無く、単なる興味から来た問い掛けで、 )
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