春宵 2017-09-17 00:25:05 |
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ねえ、先生。私と駆け落ちをしましょう、そしてもし誰かに見付かってしまったのなら、──いえ、別に見付からなくてもいいけれど、
( 今日も人の目を避けて訪ねた彼の家の中から、段々と夕暮れに染まる街中をちらりと見遣り。ああ早く帰らなければまたお父様に怒られてしまう。そんなことを考えながらも彼からは離れ難く、依然その場から動く気にはなれない。その気持ちを表すかのように文机に向かう彼の背にぴとりとくっ付けば、ぽつりぽつりと小さく、しかし相手には確りと届くほどの声で言葉を紡ぐ。寸刻間を空け次に紡いだのは「私と心中しましょう」軽くあしらわれるかも知れない、そもそも相手にしてもらえないかも知れない。けれども自分は本気だ。彼と結ばれず親の決めた人間と結ばれるくらいならば、彼と死んでしまった方がマシ。何て自分勝手だろう、我ながら幼稚な考え、まるで幼子の我儘のよう。そう思う反面で期待してしまうのも事実、彼は一体どのような反応を示すのだろう。返答に少しばかりの緊張感を抱きつつ瞳を伏せ、彼の衣服を軽く握り締めて )
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