なにも知らなかった私を助けてくれた貴方に会いたくて。
お礼を言う前に去ってしまったあの人を。
恋い焦がれるのはダメなのだと言い聞かせてきたけれど。
やっぱり貴方に会いたくて。
時々痛む背中に、やはりあれは嘘ではないと実感させる。
貴方は人間で、私は翼をもがれた天使。
私たちはけして交わることのない種族。
嗚呼、それでも私は貴方にお礼と想いを伝えるために会いたいのです。
昔、気まぐれで助けた天使がいた。
汚れも何も知らない純真で綺麗な天使。
もがれた片翼は痛々しく血に染まっていた。
簡単な処置だけを施して俺はその場を去った。
性別がないとされる天使の美しさに目を奪われたなんて、絶対に言えるわけがない。
あの子と俺は異種族。
交わることはけしてない。
天使のあの子に俺のことを知られてはいけない。
俺は、ヴァンパイアの一族なのだから……。