主 2017-06-05 20:48:24 |
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---世界---
日々を彩る科学、より強化された安全、長寿国の先駆けとなる最新医療を世界へと発信している先進国、日本。
しかしそれも、数100年前までの話。
求め過ぎた理想は、追い付いてきた現実に抗うすべもなく、小さな島国の発展した文明は衰退していった。
細かく分かれていた都道府県を無くし、東京を首都のまま残し他は区分で区切るようになった。
1つは北海道を含む東北区分
2つめは東京を含む関東・首都区分
3つめは近畿地方(※日本歴史大全より)を含む近中部区分
4つめは四国を含む中四国区分
5つめは沖縄を含む九州区分
この5つに分け、東京を総本部にそれぞれの区分に支部を設け日本並びに『日本帝国』となる。
文明が衰退して約100年。限られた資源の中で生活をするのに限界がきていた。
治安が悪化し弱気者は明日を見られず、怒号と悲愴の中で人は、希望を見出すために宗教や黒魔術と言った非現実的なものに縋っていった。
『 日本を堕としたのは神である 』
誰かが教えたこの言葉は呪いのように日本帝国中に蔓延し、それがさらなる悪循環を呼び覚ました。
『 神がいながら何故このような仕打ちを 』
電気は総本部又は支部周辺地域までしか通らず、水道は水しか出ない。以前は当たり前のようにあった通信機器も今では殆どあらず、貴重な資源となっていった。
廃墟と衰退の一途を断ち切ろうとする文明が混ざりあった少しだけ歪な日本。
弱気者に明日はない、強気者が生き残るのみ。
そんな日々が続くなか1人の人間がその障害を終えようとしていた。
絶望し苦悩し悲しみの果てに、山の奥深く霧立つ崖の上から飛び降りようとした。
しかしそれは叶わず、“ある存在”がそれを阻止したのだ。
『 人間よ、人の子よ。尽くせ、御国の為に 』
黄金色と眩い白と光を纏ったそれは、古くから伝わる妖怪の類。
文明が衰退した事により、姿を現しやすくなったと“それ”は云う。
衰退したのを戻すことはできない。ならば、今出来ることを懸命に探し、御国のために尽くせと云う。
弱気者を助け、平等を取り戻せと。
その人間は“それ”と主従の関係を結んだ。
帝国の首都に、帝国軍を設立し治安を守る為の活動を行っていった。
だが、“それ”の出現によりあちこちで同じ類のものが現れるようになり善悪問わずに人間と契約し対抗する者まで現れた。
それから約200年、神曆357年。
“それら”の類のものは1匹個体でも悪さをし人々の生活を困らせていた。
これは、帝国軍に身を置き治安を守るために命を捧げる人間と、抱いた理想を掲げる反帝国軍。それから、人間のその滑稽なまでの人生を寄り添い、共に生きる妖怪との話。
主従にいつしか、種族を越えた恋慕を抱いた時、互いに何を思うのか。
雲の切れ間から、華と散る儚き人間の命と、永遠に近い時間を生きる妖怪の思考は交差し絡み合い、歯車を狂わす。
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