しお 2017-05-27 23:03:34 |
通報 |
煙草、辞めないの?
( 独特の香りに肺が悲鳴を上げる。あからさまに嫌な顔をしてやると、彼は窓を開けた。早朝の冷たい空気が頬を撫でて少し肌寒い。ちっとも美味しくなさそうな顔をして吸引を繰り返す彼の横顔は、綺麗な朝日に似合わないくらい草臥れている。それが少し面白くて。煙草を灰皿に放り込んだ彼を引き寄せて、それから唇に触れた。苦味とほんの僅かな甘味。美味しくない、と呟くと、彼は今日初めての笑顔を見せた。口角がきゅっと上がって、目尻が伸びきったみたいに緩む。その顔が一番かっこいいよ、なんて笑ってみたりして。 )
( 口に苦味が広がったのと同時に聞こえた声に、適当に頷いて視線を寄越す。整った顔がくしゃりと歪んでいる。渋々窓を開ければ、出てきたばかりの朝日が視界を白く染めた。普段より何処か苦味の強い煙草はあまり美味しくなくて、まだまだ十分残っているそれの先を灰皿で潰すように押し付けて。それから助手席から伸びた手のなすがままに相手に触れた。長い睫毛に縁取られた瞳が瞬きを3回、そしてそっと唇が離れる。不味いという割には何処か楽しそうな顔が愛おしい。その穢のない笑顔が眩しくて、少し後ろめたくて。抱き締めようとした手を握りしめて笑った。 )
トピック検索 |