黒猫 悠華 2017-05-22 16:43:58 |
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《 どうして、じゃない なんだそれ 》
紙を突き出すと、女の子は途端に怒り出す。
「なっ...人の歌をそれ呼わばりするなんて...っ!!!」
だから女の子ってのは分からない。なんで真実を告げると怒り出すのだろうか。多分俺には一生分からないんだろうな...。
「...まぁ、そーだよね。そういわれても、仕方ない、よね」
なんて思った途端、今まで感情高揚していた女の子が急にシュン、となる。喜怒哀楽が激しいのか、今まで無理していたのか、これも一種の作戦なのか。まぁ、この馬鹿っぽい子のことだから三つ目はないと思うが。
「私、音痴なのは自覚してるんだ。でもね、どうしても上手くできなくて。もう...困っちゃうよね」
《 , ,歌えない人の前で そんなこというな 》
「でも..,っ!何度もやったんだよ、歌いたくて」
《 でもまだうたえるならうたえばいいだろ 》
自分でもわかってるつもりだ。
「こんなんじゃ、歌いたくても歌えないじゃん!!!」
言葉が雑になってきてる、って。俺も、この子も。
《 うたいたくてもうたえねーのはこっちだよ ぜいたくいうなよ 》
《 おんちならおんちなりにどりょくしろ おくじょうでおおごえでうたう とかな 》
《 なんでおれのまえでそんなこというんだよ 》
《 ふざけんな 》
本当に歌いたいのは、こっちだ。
武器を奪われた主人公なんか、主人公じゃない。モブだ。俺は、モブなんかになるなんて、絶対嫌だった。
「...ねぇ、大変、誠に言いにくいことが三つほどあるんだけど」
《 んだよ 》
「字、読めない。名前何?もし良ければなんだけど、良ければ、なんだけど」
今までの紙を見返す。あー。読めねぇ...。
名前はこっちも聞きたかったな、もう二度と近づかないように。
「... 私の音痴、治して、くれます、か」
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