匿名 2017-04-17 22:31:01 |
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あるひ、目が覚めたら、すぐそこに空が見えた。飛び起きて辺りを見渡すと、近所の家(の断面図)だとか、すぐ隣の弟の部屋がみえ、それぞれのさきには等しく真っ青な空が続いていた。なにがどうなっているのかと目をなんどもこすった。なにも変わらなかった。私はおぼつかない足取りでベッドからおり、そのまま、まだ寝ているろんに駆け寄ろうとした。見えないナニカに頭をぶつけた。確かに、そこには弟との部屋を隔てる壁があったはず。私は怖くなって、思わず声をあげた。
「ろん!もう朝だよ、起きて!」
声は震えた。こんなに近くにいるにも関わらず、ろんはすぐにおきなかった。「……ろ、ろん!!」すこしだけ、身をよじった。やがて起き上がると、ぐぐぐと伸びをした。すると、口を開けた。声を発したようだった。「はいはーい……」こんなに近くにいるのに、真ん前にいるはずなのに、その声は小さく、前からではなく左から聞こえてきた。そして、ろんはヒョイとベッドからおりると、わざわざ遠回りをして、私のところにきた。まだ半目にもならない目で、大きくあくびをしている。
「おはよ、ゆん」
「……」
「……ゆん?」
思わず、腰が抜けてしまった。ろんはようやく目をさまし、慌てて私の体をキャッチすると、「どうしたどうした」と私の顔を覗きこんだ。そうして、息をのんだ。
「どうしたの」
「……え?」
「汗やばいよ、こわい夢でもみた?」
「……」
夢なら、どんなによかったかな。
◇
「ゆん、家出しよう」
「……どうしたの、急に」
「急じゃない。ずっとそうしようと思ってた」
「は?」
「ちょうどいいじゃん、ゆんが中学にあがるところで、環境もがらっと変えちゃおうよ」
「ろんはまだ小6でしょ」
「いいよ、あんな学校、思い入れないし。ね、卒業式のあと、そのまま三門市ってところいこう」
「ミカド?どこよソレ」
「ゆんが育つのに最適な場所!」
「も~。なにがあったのか知らないけど、そう無計画になんでもかんでも口ばしるのは、ろんの悪いところだと思うよ」
「無計画なわけないじゃん。めっちゃプラン考えてるよ」
「じゃあ住み家はどうするの?」
「アテがある」
「へぇ?お金は?」
「ある」
「どこに」
「通帳にそれぞれ何千万は入ってるっしょ、あのひとのことなら」
「その通帳はお父さんがもってるじゃん」
「いや、オレの部屋にある」
「は?」
「オレの部屋にある。で、衣類は多分普及されるとして……、食はまぁ節約していけばなんとかなるし」
「いやいやいや」
「で?ほかには?」
「……ええっと」
「ねっ?大丈夫でしょ?」
「だ、だめでしょ!」
「なにがダメなの」
「それはちょっと、私バカだから、住むための条件とか衣食住しかわからないよ?だけどさ、ふつう無理でしょ」
「そうやって決めつけんの、マジよくねーって」
「それに、お父さんに怒られるよ!」
「あの人にあわなければいい話だろ?」
「捜索願いとかだして、いろんな人に迷惑かけちゃうし」
「この辺の地域のやつら、人がいなくなっても、ぜーんぶ神隠しで済ませるやつらだから、まぁ迷惑かかることもないんじゃない?」
「それは、……」
「……あのね、ゆん。オレはゆんのためを思っていってんの」
「なにがよ」
「三門にはね、ゆんみたいな人がいるんだって」
「私みたいな人?」
「そう。壁が見えないでしょ、ゆん」
「……、え、私のほかにもいるの」
「うん、いるんだって」
「なんでそんなこと、ろんが知ってるの」
「ネットで訊いたことがあんの。ウチのねーちゃんが超能力に目覚めたかもしれないんすけど、事例ってありますかって。そしたらオレあてに直接メールがとどいてね、「あります。現在確認できているものは、嘘を見抜くものと未来視程度です。ぜひ、お姉さんの能力を教えてください」って」
「教えたの?」
「うん。そしたら、ぜひ三門にきてくれって。ゆんの力が必要だっていうの」
「……そうなの」
「そしてね、もし三門まできてくれたらね、お母さんについての情報もやるって」
「えっ」
「まだ詳しくはいえないんだけど、あの人たちはお母さんがなんでいないなったのかわかるんだって」
「……」
「ね、ゆん。オレね、お母さんに、まだお礼いってないの。いいたいの。お願い、いっしょに行こう」
「……私バカだから、いくさきざきで壁ぶつかるし、あしでまといだよ」
「慣れてるからヘーキ」
「……もう、仕方ないなぁ」
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