フラミンゴ 2017-03-30 08:35:20 |
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>フラミンゴ
(答えを待つ間がいつもよりも長く感じられた。彼の発する沈黙は心地良いはずなのに、この時ばかりはいや増す緊張感に生きた心地がしない。触れた手が無様に震えるのだけは阻止しようと口許に力入れ、くっと真一文字に引き結ぶ。一種の切迫した均衡は指の腹に与えられた刺激に崩される。こくり、喉仏が動く。後頭部に添えられた掌に突き動かされるように身を乗り出し、噛み付くように彼の唇へ荒々しく唇を重ね。返答する余裕はなかった。口の端から漏れる吐息、少しばかりかさついた感触が欲を刺激する。一体言葉もなくどれ程のあいだ重ね合わせたことか、漸く一息つくように顔を離す。部屋の照明が跳ね返り瞳が鎮まらない欲を孕んで鈍く光る。「…止められる訳ないやん。ふーちゃん、分かってるやろ?なん、それとも…煽っとるん?」彼の瞳、奥深くまで射抜くように見詰めながら、伸ばした親指の腹で唾液で照る相手の唇を拭う。ここが城でなければ今頃どうなっていたか。自制心を試される状況に腹の底から息を吐き出し熱を散らす。項垂れるように膝に手を置き前屈みになると、その拍子で肩口から髪が垂れる。視界は白銀に染められ、彼が視界から外れることで落ち着きが戻ってきて。「ほんま、キッツイわァ。こんな我慢したの何年振りやろ。俺の忍耐力もまだまだ捨てたもんやないな。美味しいもん食ったらはよ俺らん家戻ろ?」ぶつくさと呟きを落とし、最後には焦れたように彼を急かして。「ふーちゃんには、なんでもお見通しやねんな。なぁ、俺が今聞きたい言葉も分かる?」予め予測していたように受け止められる身体。すりすり、と首筋に擦り寄り彼の体温を目一杯感じながらも、この瞬間の幸せを享受して。そっと首筋から離れて近距離で彼の優しげな瞳を覗き込めばキラキラと期待した眼差しを向け。きっと"好きって言ってほしい"そんな想いは隠し切れず彼にはダダ漏れなのだろう)
>ダム
…褒めてはいない(一層清々しいほどに太々しい。む、と眉間に皺が寄ってしまう。自身には真似出来ない、そんな様子が彼にはプラスに働き魅力として反映されるのだから堪ったものではない。情けないほど小さな声量で、その魅力に抗うように言葉を返し。一体誰のことを言っているのか、疑問に思うほど述べられた内容は己という存在と正反対そのもの。目を白黒させながら、目の前の彼を呆然と見遣る。ここまで正面から率直に褒められたことがないため対応に困る。二、三度口を開閉し、軈てへの字にひん曲げては「そんな事を言うのはお前だけだ…。それに……綺麗なのはお前の方だ」視線のやり場に困ってキョロキョロと泳がせつつ、ボソボソと言葉落とし。綺麗、などと男に対して使うのは存外に恥ずかしいものだ。言葉にしたは良いが羞恥心が一気に襲ってきて頬が熱を持つ。慌てて先刻の台詞を打ち消すように"…と思ったりしなくもない…なんて……"と往生際悪くもゴニョゴニョと不鮮明で聞き取りづらい声量で付け足す。己の言い分を受け止め律儀に許可を求められては断る度胸はない。彼の隣を歩くなど罰ゲームのようなものだが、この短時間で彼に絆されるかけている自身がいる事もまた事実。こくり、と小さく頷く事で返事の代わりとして。「…そのたるとたたん、とは何だ?」聞き馴染みのない単語にパチパチと瞬きを繰り返し、首を傾げる。文脈からして食べ物のようだが。知らないものを探求するぐらいの知識欲はある。じ、と無言で眼差しを熱心に注ぎ込み、彼からの返答を期待して。タイミングの悪いことに、ウインクした瞬間をバッチリとこの目で見てしまった。ぎくしゃく、とぎこちない動作で視線を逸らし「…情報感謝する。その、ムカデ、という人に頼めば貰えるんだな?栄養剤は仕事の片手間に手っ取り早く摂取出来るから重宝するんだ……。味はこの際どうでも良い。不味い方が目も覚めるし、一石二鳥だ」聞かれてもいない事をあれこれと無駄に喋る事で気を散らそうと努力して)
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