フラミンゴ 2017-03-30 08:35:20 |
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(見れば見るほど艶やかな光沢は食べて食べてと己に訴えかけてくるようだ。きっと新鮮だからこそ、こんなにも瑞々しいに違いない。更に後押しするような彼の言葉にこくり、と喉を動かして。淑女にはあるまじき行動なのは重々承知、然し此処には彼と己の二人だけ。生い茂る木々が人目から隠してくれる。シィー、と人差し指を唇の前で立て先に「外で果物に噛り付いた、て二人だけの秘密な?」と口約束しては、ぱくりと杏子の実を口に放り込んで。梅に似たどこか爽やかで甘酸っぱい味が広がる。へにゃり、と頬が緩み「めっちゃ、美味しー!美味しいもん見付ける天才やね!」キラキラと瞳を輝かせ、尊敬の目で己よりも高い位置にある彼の顔を見上げて。六つある手の中の一つを器用に動かして、何処か可愛らしささえ感じる動作で指先を動かす彼にくすくす、と笑いが漏れつつも、己の推測が当たっていたことには"えっへん"と胸を張ってみせ。彼の気遣いから近付いた距離感に己からも寄り添うようにもう一歩近寄っては、すんと鼻を動かして。「やって、お兄さんからめっちゃ森の匂い?かな、緑とか土の匂いするし、一目見てあの木ノ実が何か分かる人なんて早々居らんやろ?」ぴ、と立てた人差し指を得意げに左右に揺らしながら、そこに行き着くまでの考えを幾つかあげ。「なんや落ち着く匂いやね」もう一度顔を近づけ彼から漂う香りに目を閉じては、言葉通りすっかり初対面などと感じさせない気安さで安らいでみせ。「城?あぁ、住んでる場所のこと?うち、帽子屋のお姉ちゃんの所にお世話になってるねん。お姉ちゃんが淹れてくれるお茶、ごっつ美味しいねんで。今度一緒にお茶会しよな」疑問符で尋ねられた城との言葉に最初は首を傾げる。挨拶にしか城には訪れなかったから、初めはピンと来ず。首を傾げ数秒、城の前の文章から彼の聞きたい事を察すれば、返答と共にちゃっかりお誘いの言葉も添えて。「ムカデちゃん!うちは、ソヨン言うねん。お兄と弟と一緒に来てるから、もしかしたら誰かから話聞いた事あるかもやけど」漸く知れた彼の名前、それが嬉しいとばかりに嬉々とした声音で一度その名を発し、次に自分の名前と家族の事を伝え。どうやら出会える事すら珍しい存在らしい彼。未だ未だ彼と話してみたい、用事というほどの用事もなく、選択は一択しかない。一番下の右手を搦めとるように握っては「ホンマ?ムカデちゃん、連れてって!」急かすように繋いだ手を上下に振り、わくわくと頬を朱色に染めて)
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