フラミンゴ 2017-03-30 08:35:20 |
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(己と出逢ったから変わったというのか。そんな自覚はなく、彼の横顔をマジマジと見詰める。あの頃から色褪せることのない柔らかなピンクの髪色が、ふわりと彼の輪郭を覆っている。相手の言葉を切欠に、少しばかり記憶の海を漁り、過去を遡って。鮮やかな薔薇が咲き誇る中、一人淡いピンクを纏い、暖かな陽光と共に流れゆく微風に掻き消えてしまうのではないか、と心配を抱いていた事は懐かしい思い出だ。「うーん、そう言われてもなァ。会った時から、なんや可愛えらしい奴やな、とは思たけど。ふーちゃんは初めから優しかったで?これまた分かりにくい優しさやったけど、そこがまた何とも言えん良さって言うか」最低などと、思った事はない。むしろ、初めに彼に出逢えて良かった。他のアリスに盗られてしまえば今頃後悔しても後悔しきれない。要は殆ど一目惚れ。カラカラ、と彼が照れてしまいそうな甘い言葉を揶揄い混じりに告げつつ、最初から好意を持っていた事をそれとなくアピールし。一年、そのワードに、もうそんなに月日が流れたか、と感慨深く深く息を吐き出す。だが物思いに耽っている暇を彼は与えてくれず。モゴモゴと口籠り、言いづらそうな言葉たちを聴き流さないよう耳を澄ましていれば、予想外の提案が。かなりの衝撃と共に、刹那周りの音が消える。意味をじわじわと理解してくると、喜色に顔は染まる。「ふーちゃん、それホンマ!?勿論っ、断るわけないやん」無駄な沈黙が相手に不安を与えぬよう矢継ぎ早に一先ずそれだけを伝え。逸らされた瞳をこちらに向けるべく、両手で彼の頬を包み顔をこちらに向けさせては、こつりと額同士を合わせ。「楽しみやなァ。二人で家具見に行って、俺らだけの家にしよ。場所は閑静で静かな所がええかな?」これではどちらが先走っているか分からない。だがこれから描く幸せな未来の予想図は留まるところを知らず、口から溢れていく。ゆっくりと登っていく観覧車、小さな密室は居心地がよく。そろそろ天辺に差し掛かるところか、在り来たりな噂話を信じて、というよりは周りの目を気にする彼を慮って、一番上、左右に他の観覧車が見当たらない頂上にてそっと唇を合わせる。「…先ずは籍入れな、な?」ニィ、と口角を持ち上げては流石にベタ過ぎたか、と少しばかり照れたように目元を染めて)
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