自堕落な男。 2017-03-17 00:05:23 |
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…………、……あぁ、そう、これだ。いかにも美味そうだからさ、このビーフシチューなんかどうだ。最後に食ったの、もう10年くらい前なんだわ。
(少女が枕に顔を突っ伏しながら呟いた言葉こそ聞き取れなかったが、『無防備過ぎる』という不覚にも零してしまった本音を聞いて彼女が頬を染めたのに気づけば、はっと我に返り決まり悪さから意味もなく顔を逸らし、いつもの調子を取り戻そうとレシピ本を指し示し。
──しかし、今は少女が突っ伏してくれてかえって良かったのかもしれない。蝋燭の灯りがもたらす穏やかでどこか妖しさの匂うふたりきりの部屋で、可愛らしく布団に潜り込んだ少女がこちらを見上げてくるその情景は、またしても凄まじい破壊力だったのだ。「あとはこれなんかも食いてえな」などと冷静を装いページを捲りながらも、一度滾った脈の乱れは治まらない。またしても墓穴を掘るとは、第一女遊びに慣れているはずの己が少女ひとりにこのザマとは。自身への苛立ちが募ったのか、座ったまま立てた片膝に肘を置き、片手を額にあてがいながら、一度煙草を深く吸い。)
まあ、学校もあるだろうから、余裕のある時で良いぜ。急ぐような事でもないしな。
ん、りょーかい。
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