風人 2017-02-09 19:49:33 |
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機動戦艦ナデシコ ルリ AからBへの物語/大河内一楼 佐藤竜雄/角川スニーカー文庫
物語としてはテレビシリーズから劇場版『Prince OF Darknes』までのミッシングリンクにあたる作品。
OVA『熱血ロボ ゲキガンガー3 熱血大決戦』の前後いずれかに位置する時系列と思われる。
物語はテレビシリーズ後のてんやわんやの木星連合と地球側の対決の後にいちおう両者に和平条約が結ばれ火星の遺跡を無断に戦艦ナデシコと共に宇宙の何処かにボゾンジャンプさせた責任を艦長ミスマル・ユリカたち乗員は通称ナデシコ長屋に隔離勾留されている。
隔離勾留といってもある程度の自由は認められており漫画に勤しむ者や発明に励む者、ラーメン修行に励む主人公アキト。
そして地球と木星連合の和平は着々となされるなか彼らもナデシコ長屋から卒業となる。
木星連合で兄が戦死したユキナはなりゆきから兄を愛してくれていたハルカ・ミナト共に暮らすことを決意する。
だがオペレーターであったルリを誰が引き取るかでユリカやアキトなどかつての乗員たちは名乗りを上げる。
結局はプロスペクターの策により結果的に艦長だったユリカそしてユリカの恋人であるアキトが引き取ることになる。
物語はユリカ、アキト、ルリだけでなく他の人物たちも少しずつ『大人』になることを自覚し“ナデシコ”というモラトリアムもしくは学校に喩えられるべきところを『卒業』してゆく。
物語は劇場版の物語が進行する直前を“プロローグ”として皮肉な終わり方を迎える。
それは新婚旅行に出たはずのアキトとユリカのシャトルが行方不明になり悪い形で終わる。
ルリは少し大人になりアキトやユリカたちの写真を“家族”として見つめ彼女は新たなナデシコBの艦長となり乗員たちの会話を耳にしながら物語はそこで終わる。
劇場版『Prince OF Darknes』同様に『ナデシコ』という作品としては負の面があるように思われる。
しかし読み方を素直にすればモラトリアムを卒業してゆく青春期から成熟期へとなる物語でもある。
大人になることを読者は登場人物を通して懐かしくもバカバカしい青春を振り返り大人として読める作品でもある。
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