風人 2017-02-09 19:49:33 |
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ブラックペアン1988/海堂尊/講談社文庫
海堂尊氏の『桜宮サーガ』シリーズバブル三部作の一作目。
時は1988年のバブル期の日本、舞台は後にバチスタスキャンダルが起こる桜宮市にある東城医大。
若き日の世良雅志を主人公に据え彼の視点心情を中心に物語が始まる。
医療体制が変わりつつある社会のなか奮闘し渡海征四郎そして帝華大よりきた高階権太、このふたりにより影響を受け成長する世良先生。
含みある考えを持つ当時の病院長佐伯清剛。
ペアンを誰にでも使えるようにと思想を持つ高階、かたやクールなまでに己の手術のレベルや域を超えんとす渡海。
しかし事態は思わぬ方向へと傾く。
渡海先生は佐伯病院長を実は快く思っておらず彼を陥れようとする。
しかし患者の体内に手術道具が残したのは無理に取ったり排除すれば患者自身の生命に危機があるからであった。
渡海先生高階先生ともになす術がないなか北海道極北から佐伯病院長が駆けつけなんとか困難を乗りきる。
そして渡海先生は自らの過去を佐伯病院長により伝えられ真意を知るが彼は東城医大を去ることになる。
佐伯病院長の考えは渡海先生と高階先生ふたりを競わせることで東城医大の未来を担うことであったが渡海先生の勇み足で頓挫となる。
患者の体内にペアンを残したことは後の時代『ケルベロスの肖像』(および『輝天炎上』)にて帰決する。
患者の生命自身のためにペアンを残したことを医療ミスとするかがひとつの問いかけである。
『ケルベロスの肖像』において高階先生は患者や患者の家族に伝えなかったことを悔やんでいる。
また物語には若き日の医学生時代の田口公平たち三人も登場しており各々それぞれの道へのきっかけとなる。
また世良先生と花房さんのデート場面には映画『となりのトトロ』に触れられている。
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