ノック・ノック　　　ＮＢＬ　/　募集　/

（全く最低な気分だ。レコードをありったけの音量で響かせてもなおかき消されることのない雨粒の家屋や地面を激しく叩きつける不愉快な音色は己の苛立ちを助長させるものでしかなく、パソコンの画面に映し出された小説の文章は「彼は、」という書き出しのまま一向に物語が始まる気配もない。液晶画面が放つ無機質な明かりだけが室内を照らし出す中、更に増えた雑音に苛立ちは最高潮へ。ノックの音などこの悪天候で聞こえる訳がない、何かの聞き間違い、疲労による幻聴に過ぎない――そう自分自身に言い聞かせて五分弱、いつまでも鳴り止まぬそのノックに堪忍袋の緒が切れたとばかりに椅子を床に倒しつつ立ち上がり、乱暴にドアを開け放って大股歩きで廊下を進み玄関へと。一体どんな不届き者が我が平穏を乱さんとしているのか、その正体を突き止めんとノックされている玄関の戸を勢い良く手前に引き。すると其処には痛ましいまでに濡れそぼつ年若い男女がひと組、深刻そうな事態につい先程まで抱いていた苛立ちも何処へやら、アンティークゴールドの毛先から雨雫を滴らせながら事情を説明する彼らの礼儀正しい言動にすっかり絆され、その内容は自業自得と思わないでもないが此処ですげなく扱ってこの二人が死体で見付かりでもしたら後味が悪い――。扉を片手で支えたまま、道を譲るように自らの体を脇に退けて致し方なく自宅に招き入れる姿勢を示した。）
……入れ。タオルくらいは貸してやる。




（／拙い描写にてロルテスト失礼致します。
作り込まれた設定と世界観に惹かれまして、参加を希望致します。当方、映画に関しては荒筋を把握している程度の知識しかないのですが、それでも大丈夫でしょうか？
もしよろしければ、keepをお願い出来れば幸いです。）