長八寸三分の淡藤色　／　〆　　

いいかたな、か。なんとも誉れだかい言葉じゃあねえか。こりゃあ此れからも頑張らなくちゃな。まあ、戦場じゃ頼りにしてくれていいぜ。大将の名を汚さん程度の働きはこなすさ。(　にっ / 胸叩き任せろ、と　)はは、そりゃあ有難い。成長なんざするのかもわからんが、この形だと随分飯が食えるもんらしくてな。何時も空きっ腹なんだ。本当かあ？皆、大将の魅力に気づけんなんて審美眼が足りてねえのかもしれんなあ。雅な事はわからんが、あんたの魅力はよく分かるぜ？(　くくっ　)勘弁してくれ。俺だって好く思ってる人には格好いいとこ見せたいんだよ。いっちょ前に男なんだからよ？(　困った様に後頭部掻き　)

ほう？大将が逃げてないとはな。
(　戸を開こうとすれば聞こえてきた返事に驚いたように目を丸くすると、相手を揶揄うように告げて。作業を始める前から草臥れて見える相手に思わず苦笑を漏らすと｢ま、逃げずにいたんだから大将にしちゃ偉いわな。褒美はちゃんとやらにゃならんか。｣等と述べると相手の横にごろりと横になり。｢生憎俺も疲れてんでな、1時間ほど休憩としねえか。｣なんて尋ねすると少しばかり悪戯っ子のような年相応の少年じみた笑みを浮かべて。さあ、此方に来いというように自身の横をぽんぽんと叩くと寝る気満々なのか既に眼鏡を外し、瞳は閉じられようとしていて。　）

はいはい。うちの薬研藤四郎が戦場で頼りになるかたなだッつうのは十二分に承知してるし戦果を挙げて呉れるのは未来の為にも有難いことだが無事に帰ってきてくれさえすれば俺の名前何ぞ汚れようがどうしようがどうだって良いのさ。（　ふ　）御前達にゃあ本来飯を食う文化がない所為か無頓着な輩が多過ぎンだよ、…寧ろもう１食増やしても困らなさそうだな。薬研が好事家なだけだろうに。俺が女でも俺のような不精ッたらしい体たらくな男好きにゃあならんぞ。（　ふは　）俺も男だからな、其の言い分はわからんでもないが普段から格好いいンだから偶に可愛い處晒すくらいいいだろう。

御前の兄貴を丸め込んで小雲雀を拝借出来る自信が聊か無くてな。
（　揶揄う彼に態とらしく至極残念だと言わんばかりの口振りで両肩竦めつつ再度纏めた書類に視線落とすも突然隣で寝転び始まる彼に鳩が豆鉄砲食らったような顔曝すも薄く色づく唇が休憩だと紡いだことで状況飲み込んだようでふと眦細め、ひょいと外した彼の眼鏡のブリッジ部分摘んで其れ寝潰して仕舞わぬ為にも安全そうな文机の上に避難させてから畳へと身体投げ出し、「 俺の喜ぶ御褒美心得てるじゃねえか。此れで抱き枕何かあると完璧なンだがなァ？ 」完全に短刀甘やかす積もりの物言いで腕枕勧めるよう隻腕広げてみせ　）

嗚呼…悪ィ大将…。背後がちと体調を崩しちまっててな。急いで返してえから上の会話蹴らせてもらうな。面倒になったとかじゃあ、ねえから安心してくれや。(　頬ポリ / 申し訳なさそうに視線ふらり　）


嗚呼、今日の当番はいち兄か。道理で其奴は逃げられねえな。
(　相手の言葉を聞くと少し吹き出したように笑いだし、相手の驚いたような顔にさらに笑ってしまい、ツボにはまったのか暫くくすくすと笑っていて。眼鏡が外すと焦点がずれるのか暫く目を細め、あまりよろしいとは言えなき目つきで辺りを見ると腕を広げた相手がいて。自身は確かに短刀でありやはりその場は落ち着くのだが、些か子供っぽいという事が気にかかっては葛藤するも、相手の発言から相手が求めているということはわかり、ともすればもとめた相手が悪いのだと相手の懐に収まると背に腕を回して。　）

嗚呼…背後の使ってるあいふぉんとやらのきーぼーど？にはあぷり？が使われているらしく、俺の名を入れると変換で出るそうでだな…何が言いたいかと言うと、上のは俺だってことだ。

そんくらいなら気にすることもないさ。名前の方も把握した。それよか俺は御前さんの背後が体調崩したことのほうが心配なんだがな。季節の変わり目ともなれば体調も崩し易くなるンだから悪化したりぶり返したりせんように暖かくして栄養のあるもん食うこと、な。（　なでくり　）

彼奴に捕まってありがたーい御説教聞かされるくらいなら御前と書類仕事してる方が余程ましさ、───と言うか笑い過ぎだろ。
（　短刀として顕現させた小学校高学年や中学生程の外見に相応した無邪気な笑顔曝す姿和ましく思い、思わず眦が緩んで其れ眺めているも一向に笑い収めようとしない彼に笑い過ぎだろうと飽きれた様子で彼の頭頂部わしりと乱暴なる造作で撫でて仕舞えば指先が前髪を乱していて。懐に子供特有の高い体温が着物越しに伝わってくれば冷えた身体には心地よく感じられ「 こりゃあ良い抱き枕だこと 」と穏やかに述べた台詞の語尾には若干の睡魔滲ませつつぽんぽんと母親がちいさな我が子を寝かしつけるような一定のリズムで小柄乍ら頼れる彼の背中を叩いてみせ　）

はは、風邪なんて滅多にひかんような健康が取得の馬鹿だからな、心配には及ばねえさ。嗚呼、また遅れちまったな、すまない大将。…んん、実は背後が所謂受験生ってやつでな。息抜きに偶に顔出すつもりだったんだが、どうにもやっぱりこう、待たせちまったなあ。(　バツ悪そうに頬ぽり　)


いや、悪い悪い。大将の驚いた顔があまりに愛らしくてなあ？
(　反省の色の見えない謝罪をすれば、揶揄うような言葉を紡いでは、頭を撫でられまた眉を下げてけたけたと笑って。この戦と戦の間の穏やかで幸せな時間が永遠に続けばいいなんて、戦刀には相応しくないような矛盾した願いも今なら許されるような気がしては｢こういうのが、幸せなのかねえ。｣なんて小さく呟いて。子供をあやすような相手の動きも、いつもなら拒むものであるが、今だけは大人しく受けておこうかと気持ち良さげに目を細めれば年相応の穏やかな表情を浮かべて。　）

受験生とは亦懐かしい響きなこッた。（　わしりと撫でまわし ／ わはは　）この時期に風邪引いてるやつが受験生とわかれば尚更心配になるが、…嗚呼。返事の頻度は気楽に考えてくれて構わんからな。俺も待たせる時はあるだろうし都合があるのは御違い様だろうに。

あいらしいねえ。そういう褒言葉は誰かを口説きたいときの為に取っておいた方が良いと思うぞ。
（　その薄い唇から謝罪文が述べられたと言えど悪びれる様子などおくびにも出さずふたつの藤色が更に細まる光景目の当たりにしては呆れたようにべえ、と唇と唇の隙間から赤い舌出し。幸せの二文字に普段から彼等にしあわせがあらんことをと願う身としてはこのうえない嬉しさがじわじわと込み上げつつ「　はは。御前さんが幸せならそりゃあ何よりッてもんだ、な───　」と手を上げて喜びたい處で襲いくる睡魔に従順に双眸閉じてしまい。　）