主 2016-11-07 18:03:31 |
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>立夏
(果たして己の些細な褒め言葉で相手は満たされるのだろうか。不安とも言えない一抹の疑問が脳裏を過り思案するが、不意に抱き寄せられてされるがまま耳を傾けた心音はいつもよりも幾分か速く感じられ。した事と言えば要求に応じた労いとほんの少しの本音だけ。それで鼓動が速まる理由とは何であるのか。そこへ意識を向けてしまうとつい自惚れていると言われても仕方のない考えに走ってしまいそうになり。そんな訳はない、と思考を振り払えば穏やかな笑みを浮かべて「ほんとだ。速いね」なんてぽそぽそと呟き。相手の口から紡がれるのは、まるで独占欲でも垣間見えるような甘い言葉。相手は己を所有したいとでも考えているのだろうか。問い掛けてしまえば良いと思うのに、目の前で唇を濡らす姿に目を奪われてしまい何も物が言えずにいて。そうやってぼんやりと甘い空気に浸っていた時、突然相手によって静寂が壊されるとあまりの唐突さに面食らったようにその場に立ち尽くし。今のは夢か何かだったのか、一瞬で消え去ったほんの少し前の雰囲気を確かめるように首元に手を遣れば確かにそこには痕が残っていて。散々昂らせて放置するところは相変わらずだ。その上恐らく相手には悪気も自覚も無いのだろう。「あー、もー…。ずるいってりっちゃん、」困り果てたように深い溜め息を一つ落とし項垂れながら呟くも、いつまでもそうしているわけにはいかず気持ちを切り替えれば相手に続いて室内に歩み入り。少し低めに設定していた暖房の温度を上げると、「りっちゃん寒くない?」と声を掛けながら荷物を床に置きジャケットを脱いで)
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