語り部 2016-10-17 23:07:53 |
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( ―――かたん。いっそ不自然な程に物がない、広さばかりある部屋の中で一人、だらしなく足を開き大の字に寝そべっていた。音の出どころは襖の向こう以外有り得なくて、ゆるりと首を向ければ「おいでです、お連れ致します。」、と控えめな小間使いの声がして。ああ、と短く返事を寄越せばそそくさと去っていく気配を感じ、よっ、と色気のない声を上げながら上体を起こす。はらりと瞼を撫でる長い前髪を整えながら、一か月ぶりだなと、ぼんやり記憶を辿っていた。その男―――今日の客は聞けば相当な金持ちだそうで、醜男なんだか気狂いなんだか知らないが、こんな場所へ気まぐれにやってきては一度の例外もなく己のみを指名する羽振りの良い人間であった。生憎なんにも映さぬこの双眸では男の御尊顔を見る事は叶わないものの、見えない方が良いこともあるとはよく言ったもので、今だから言えることではあるがこの仕事をするにあたって案外「楽」ではあった。 そんな思考から己を引き上げたのは、みしりと控えめに主張した床の悲鳴。おいでなすった、と心の中でぼやけばふっと小さく息を吐き、億劫そうに立ち上がると白い着流しを翻しながら音を立てずに襖の前へ移動して。この部屋に奇妙な程物が少ないのは、歩くのに邪魔になっては困るから、だ。 )
( / 素敵な絡み文を有難うございます。こちらのロルにこそ、何か不都合がおありでしたら仰ってくださればと存じます。 )
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