語り部 2016-10-17 23:07:53 |
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>語り部の独り言
大正から明治時代初期にかけて、賑わいを見せていたのは遊郭ばかりではない。
一見お断り。徹底された紹介制でも尚、水面下で支持を得て栄えていた男が身体を売る常夜の世界。
数居る男達の中でも絶大な人気を誇り、今や巨額な金をつぎ込まなければ宴席を共にする事さえできないとある男娼が居た。
正しく“華”と呼ばれるに相応しい見目麗しさ、洗練された仕草、巧みな手管。
どれを取っても、彼に勝る男娼は誰一人として居やしない。
ただ一つ、彼には欠けている物があった。
光の無い世界。常夜であろうがなかろうが、彼には色を映す瞳が無い。
悲しい過去は彼から純真さと視力を奪い去って行った。
その事実を知るのはごく一部。
失明していようが、彼には何も関係の無い事だった。
そんな彼の元へふらりと現れ、夜な夜な酒を酌み交わし帰っていく一人の青年。
海の向こうの国に憧れ、澄んだ目で世界を見詰める富豪の息子。
体温を分け合いながらあまりに遠い二人の距離。
身分も生い立ちも全く違う青年に手折られる事を夢見た、とある男娼の夢物語。
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