月 2016-09-03 18:33:52 |
通報 |
「それでも、前の主よりはマシだけどな。前の主は俺達と違ってずっと一人だったらしいけど、俺達は二人で過ごせてる。だから、屋敷の外には出れなくても、寂しい思いをしないでいるからな」
銀色の寒空のような意識を暖めたのは、糸の日溜まりのような言葉だった。
糸自身は食器を片づけ、卓袱台を布巾で拭くついでに口走っただけなのだろう。
それでも、糸の言葉に救われた銀色は、内心で糸に感謝していた。
そんな会話を交わし終え、糸が台所に食器を片づけようと部屋を出ようとした時、銀色の視線は織を捉えた。
その時一瞬、織の瞳が冷たく感じた。
僅か数秒の事。
きっと気のせいだろう。
トピック検索 |