月 2016-09-03 18:33:52 |
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銀色の問いに数秒の間を置き、それに見合う答えを発したのは、使用済みの食器を片づけていた糸の方だった。
「代償は俺達自身だ」
糸の言葉に耳を傾げる銀色に、織が続けざまに説明を足す。
「この屋敷はね、妖人の力を何百倍にも増幅させる力があるんだ。でも、屋敷は少し寂しがり屋で、力を貸す代わりに契約者を此処に時間ごと閉じこめてしまうんだ。で、俺達はこの屋敷に力を借りる代わりに、この屋敷から出る事をしない。そういう約束なんだよ」
縁側に続く襖を指先で撫で、愛しそうに、でもどこか寂しそうな織を見つめ、銀色の心が揺れる。
彼らに願いを叶えてもらえば、銀色は屋敷を出られるだろう。
でも銀色がいなくなった後、織と糸はまた二人だけになる。
見た目が若く見える彼らの時が、本当に止まっているのなら、彼らはどれほどの時を止められてきたのだろうか。
どれほど外の世界に触れていないのだろうか。
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